
授産部の音楽療法
はるかぜの五
指導員 小林真由美
平成八年四月より、私の仕事の環境は著しく変化しました。来る日も来る日も作業に追われ、機織りや染色という今まで経験したことはおろか、見る機会もなかった作業に戸惑うばかりで、花生とのコミュニケーションの取り方にも考えあぐねていました。そのような状況の中で私にとっての音楽療法は、紛れもなく花生とのコミュニケーションの時間でした。作業の中に週一回の音楽療法を取り込み、作業班別で取り組んできました。身近な人、安心できる人に認められたり、誉められたりすることで心地良くなれる。まさしくお互いの心のケアとなり、私と参加花生、私と参加職員との間に暖かい物が流れ出し、音楽療法の時間をそれぞれのスタイルで参加してもらえるようになりました。
「先生。今度いつやるがけ。」
「楽しかった。おもしろかった。」
「又、やらんまいけ。」等、
嘘でもお世辞でも、さすが授産部です。その声に励まされ、良きパートナーの木下先生と、私たちなりに試行錯誤しながら取り組んで来ました。
人間は自分を表現しようとする力の作用で成長をします。自分らしくあるということはとても大切なことです。私たちが実際に行っている音楽療法が、花生や自分の成長にどう作用しているのかはわかりません。心の成長、発達は時として、「遠回りこそが近道である」という言葉を信じ、慌てて結果を出す必要はない、と、のんびり構えています。
音楽療法の時間は、自分が苑生に楽しませてもらう。集団には、安らぎ、開放、楽しさを伝染する力があり、人の心は様々な音楽やリズムに自然に反応するという事を知りました。私達のケアは、花生の自己決定の援助です。一人でも多くの花生の意欲や選択に気付き、援助できれば、花生は、音楽療法の時間を楽しく感じることができるはずです。
はるかぜの丘の音楽療法は、仕事の忙しさの中でこそ意味を成す心のケアであり、生活を豊かにするための援助であると考えています。
児童部での音楽リズムについて
児童部指導員 谷正美 山崎美和
児童部で音楽リズムを、週日課に取り入れるようになって一年が経ちます。
はじめは、子どもたちの手を引き、大きな声をかけながら半ば強制的に連れていくという感じで、皆、何をしようとしているのか理解していない状態でした。

しかし、今では、友達の手を引き、教室の前で待っている人や、他寮の時間でも教室へ行って参加している人もいます。また、途中で出て行く人も少なくなり、子どもたちから、「音楽リズムは?」と話しかけてもらえるようになりました。
このことで言えるのは、音楽リズムを生活パターンの一つとして、受け入れてもらえるようになったのではないかということです。個々に感じ方や参加の仕方はいろいろですが、少なくとも、快い時間として感じてくれているものと思っています。
まだ、はじめて間もなく、言葉がけ通りには動いてもらえず、まとまりはありません。それぞれが好きなことをしており、やっていて不安に思うこともありますが、音楽療法の三原則である、「強制しない、叱らない、営める」をもとに、興味があれば参加してくれたらいいという気持ちで続けています。
まず、自分が楽しいと感じている気持ちを相手に投げかけ、相手からも投げかけてもらう、心のキッチボールを目指し、共に快い時間を共有できるよう、これからも続けていきたいと思っています。
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